「克ちゃん」のために
夜霧のブルースを歌ったミネさん

　東京の北の玄関口、ＪＲ線の上野駅から徒歩で十分弱。下町の路地裏にひっそりとたたずむかのように建つ古い木造のジムが、日東ボクシングジムである。最近チャンピオンは出ていないが、昭和三十年代の全盛期には、アマのスーパースター池山伊佐巳や、ライト級王者小阪克巳らが活躍した。また笠原優や石井幸喜らの世界挑戦者もこの古いジムから出ているし、あのバトルホーク風間がボクシングのスタートを切ったのもここである。
　入り口のドアを開けると、タイムスリップしたかのように、昔のボクシング道場が現れる。日東ジムは昭和６年設立という日本屈指の老舗ジム。太平洋戦争の空襲の際、リングのコーナーポストだけを残して焼け落ちたが、戦後間もなく同じ場所に復建され，今日まで半世紀以上を経過している。ボクシングよりも「拳闘」の方がピッタリくるのもなるほどのジムなのだ。
　ここにご紹介する珍しい写真は、昭和６年のジム開きの際のスナップである。こういう時に、まず神主を呼んでお払いをしてもらうのは昔からの慣習であることが分かる。左端が創始者の益戸克巳会長、その右隣は名選手熊谷二郎。中央には後にコミッションでうるさがたのインスペクターとして活躍する丸屋群造の若々しい姿もある。
　益戸会長は「不良少年の神様」と畏怖され、浅草の芸人たちの間でも知らない者がいないほどの名士だった。侠気の人で、人情篤く、友人はもちろん、そうでない人にも「益戸の克ちゃん」と仇名で呼ばれていた。だが、当時取り巻きの子分たちの中には、親分が「克ちゃん」と呼ばれるのが気にくわない者もいた。ある日誰かが「克ちゃんはいるかい」と訪ねてきたところ、子分の一人が「こら、気安く克ちゃんなどと呼ぶな」と怒った。「じゃあ、なんて呼べばいいんだ」と客。「そうだな、じゃ会長とでも呼んでくれ」。ボクシングジムの代表が「会長」と呼ばれるようになったのはこれが嚆矢である−−と、これは２代目の益戸久尚現会長が披露してくれたエピソードである。
　克巳会長が昭和50年春に亡くなった直後、後楽園ホールで催された追悼式で、リングに上がった歌謡界の大御所ディック・ミネさんが、即興で「夜霧のブルース」を歌って盟友を弔ったことも忘れられない。。（前田）　

７日　デラホーヤ、伝説のチャベスを４回ＴＫＯに破りＷＢＣ世界Ｊ・ウェルター級
　　　王座獲得（1996）

８日　レノックス・ルイス、
　　　マイク・タイソンの
　　　挑戦を８回ＫＯに退
　　　け世界ヘビー級王座
　　　防衛（2002）

９日　ラリー・ホームズ、
　　　ケン・ノートンに判定
　　　勝ちし、ＷＢＣ世界
　　　ヘビー級チャンピオン
　　　となる（1978）

10日  ヘビー級の名王者バト
　　　リング・レビンスキ
　　　ー、バーニー・レブ
　　　ロウィッツとしてフ
　　　ィラデルフィアに誕生
　　　（1891）

11日  ルペ・ピントールのＷＢＣ世界バンタム級王座に挑んだ村田英次郎、惜しくも引
　　　き分けで涙（1980）

12日  シュガー・レイ・レナード対トミー・ハーンズの宿敵再戦、引き分けに終わる
　　　（1989）

13日　ミドル級王者マービン・ハグラー、ビト・アンォフェルモの挑戦を５回ＴＫＯで
　　　撃退す（1981）