ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世　
(元東洋太平洋バンタム級王者)

　マッチメークって？

　石井フランシス、西禄朋、竹内俊介のデビュー戦を、金子ジムとの共同プロモートで行うことが決まった。次にするべきことは“マッチメーク”だった。―“マッチメーク”？「試合を組むことだ」というくらいは何となく分かるが、何をどうしたらよいのだろうか・・・。まずは親しい会長さんや、マネージャーさん達に電話をかけた。「もしもし新田ですが・・・、実はマッチメークをしたいんですが、どうしたらいいでしょうかねぇ」と、なんとも情けない質問に、皆さんは親切に対応してくれた。とにかく「各ジムにウェイトと戦績（特にデビュー戦の場合はアマチュア戦績も含む）、それに“右利き”か“サウスポー”かといった選手の基本データを申請した上で、予定されている試合日に対戦可能な選手がいるかどうかを問い合わせるのが基本」ということだった。
　早速いろいろなジムに電話をかけまくり、3選手の対戦相手を探した。調子にのって電話をかけまくっていたのはいいが、新米会長はまたドジをやらかしてしまった。何軒も電話をかけていると、「選手に確認してみる」、「サウスポーならひとりいる」「1ポンドアンダーの契約ウェイトでどうでしょう」といった、いろいろな情報が入ってくる。しかも3選手分の大量の情報である。どのジムに何の話しをしたか分からなくなってしまったのだ。同じジムに2回も同じ内容の電話をかけてしまい、「何？さっきと別の話？！」とうんざりした声でいわれてしまうこともあった。メモはマメにとる習慣を持っているつもりだったが、例えば「選手に確認」して電話を“くれる”のか、こちらから“かける”のか、それは“いつ”なのか、といったことまで、全ての電話に対して管理するのはなかなか大変だった。ジム開設前に経験した3年間のサラリーマン生活を思い出してしまった。やはり仕事が変わろうが場所が変わろうが、自分の欠点は基本的には変わらないものだ。環境のせいにするのではなく、今いる場所で一皮むけるしかないのだろう。
　ところで、ジム会長でありマネージャーでもある立場としては、マッチメークの話を進める中で、選手をなるべく勝たせたいという思惑も当然絡んでくる。プロモート分担金として、4回戦3試合分の24万円を支払う以上、“対戦相手を選べるアドバンテージ”は最大限に活かしたい。とはいえ、“明らかにこちらが有利”な対戦を望むジムや選手がそう簡単にいるものではないし、お客さんにとっても面白いカードとはいえない。
そんなジレンマの中、どうにかこうにか3選手の対戦相手が決まった。しかしホッとしたのもつかの間、今度は竹内俊介の対戦予定だったFジムの選手がスパーリング中に怪我をしてしまい、急遽試合が出来なくなってしまった。泣き出したい気持ちだったが、興行日までまだ1ヶ月以上の猶予があった為、代わりの選手を探すのにそう苦労は要さなかった。これが試合直前であったなら、さぞかし慌てふためいたことだろう。後にそのような経験もしたが、初の共同プロモートでなくてよかったと思う。いやぁ、七転八倒のマッチメーク初体験を通じて、またいろいろ勉強させてもらった。

・新田ジムに新しいトレーナーが2名加わりました。
松�ｱ徳之トレーナー・・・“普通救命技能士”
慶伊孝亮トレーナー・・・“日体大学院生　運動生理学研究員”

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