ショーセイの新米ジム会長奮戦記 no.42

新田 渉世 
(元東洋太平洋バンタム級王者)


 プロテスト合格

 西禄朋、竹内俊介の両名がプロテストに合格し、JBC(日本ボクシングコミッション)にプロライセンス取得の申請を行うことになった。各選手とも、C級ライセンスの申請料4,200円、ルールブック代1,050円、それに健康管理基金5,000円の合計10,250円を支払わなければならない。テスト受験の際も、健康診断、頭部CT検査、受験料、と約20,000を支払っている。金のない若いボクサー志望者達にとっては手痛い出費だが、これも仕方ないのだろうか。
 ライセンス申請の際には、"ボクサーとマネージャーの契約"も同時に行う。日本の制度では、マネージャーとは即ちジムであり、これは"ボクサーと所属ジムの契約"ということになる。簡単に内容を要約すると、「ジムは選手の試合、練習環境、安全等を保証すること」「選手は他のジムと契約しないこと」「選手は全ての収入の33%をジムに支払うこと」「選手はジムの指示の支持する練習等に従うこと」「両者の争議については協会やJBC等が調停出来ることに同意すること」「この契約は3年間有効とする」と言った感じである。
 この契約書は、ファイトマネーの支払方法、ジムの移籍といった、ジムと選手双方の権利と義務について、多くの問題を抱えている―と、私などは思ってしまうのだが、ヘビーな内容なので別の機会に議論したいと思う。(こうやって先送りすることが問題なのかもしれないが・・・)
 さし当たり新米会長が抱える問題とは、大学生の竹内が無断で練習をサボり、約束の時間には遅刻するのが当たり前になっている状況を、いかに改善するかという"可愛い"問題だった。一方、ヤンキー上がりの西は、約束の時間の10分前には必ず愛車シーマのバリバリ改造車を颯爽と乗りつける。仕事の都合で練習を休む時は、「すいません。今日お休み頂いてもいいですか?」と丁寧な電話をかけてくる。若くして社会で揉まれてきたことが、彼をそうさせているのだろう。ハードパンチャーの竹内とテクニシャンの西を、少し距離をおいて眺められれば、二人のコントラストが面白く感じられるのだが、なかなかそんな大きい器にはなれないものだ。
竹内は何回怒られても、「すみません。つい弱い自分にまけてしまうんです」と反省はするが、またニコニコといつもの明るさを取り戻す。しかしまた同じことを繰り返す。そんな憎みきれない男を何とか更正(?)させる為に、"ボクサーとマネージャーの契約"を敢えてものものしく行った。ひとつひとつの条文をその場で読み上げ、プロとして一緒に"仕事"をしてゆく上での"大人の契約"である旨、くどくどと言って聞かせた。
あれから約半年が経ち、西も竹内もプロとしてそれぞれ2試合を戦った。竹内もほんの少しプロ意識が目覚めてきたようで、遅刻も減り、休む時には連絡を入れるようになってきた。「ちょっと旅行にいくので―」「今日は疲れたので―」という理由でも、連絡を入れるようになっただけ成長である??? 私の器もちょっとだけ大きくなったようだ・・・。

新田ジム 最新情報

・ 岡田祐也(27)のプロデビュー戦が決まりました。4/26(月)後楽園
  ホールでのフェザー級4回戦で高久祐樹(ひたちなか)と対戦します。
・ 3/14(日)に行われる「神奈川県女子アマチュアボクシング大会」に、
  当ジムより3名の女子選手が出場する予定です。
・ 3/16(火)新米会長・新田渉世が、故郷である神奈川県秦野市の
  中学校で講演会を行うことになりました。

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新田渉世(にった・しょうせい) 
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗2分

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