ショーセイの新米ジム会長奮戦記
新田 渉世
(元東洋太平洋バンタム級王者)
"世界は今日も君の中にある"
現役時代の一時期、私は金子ジムでトレーナーのアルバイトをしていたことがあった。その頃、私が教えていた練習生のひとりに役者をやっている男がいた。私は家族を連れて、時々彼の芝居を見に行くようになった。あれからかれこれ10余年が経つ。 彼はボクシングで鍛え上げられた肉体に似合わず、とても繊細な演技をする。歌もうまい。絵もうまい。実に多才である。時々ドラマやCMなどにも出演し、何かきっかけさえ掴めばメジャーに躍り出られる才覚を持っている男だと思う。 彼は役者でありながら、もうひとつ別の夢を持っていた。「プロボクサーになりたい」―しかし30歳を過ぎ、プロテスト受験年齢をオーバーしてからは、しばらくボクシングと距離をおいていた。 昨年2月、私はジムをオープンすることになり、何度か彼と会って食事をした。「今でも心残りなんだ。やり残したことがあるんだ」彼はずっと毎朝10kmのロードワークを続けていた。「アメリカでやってみるかい?」私は思い切って言ってみた。かつて生活した米国サンフランシスコのコネクションを使えば、あちらでプロのリングに上がることは可能だ。「うん、やってみたい。絶対やってみたい!」そう言って彼は、新田ジムでもう一度"夢"を追うことになった。 芝居の稽古場がジムから近い為、昼間トレーニングをして夜は芝居の稽古―というサイクルでの生活が始まった。彼のパンチ力は半端じゃない。左フックは象でも倒してしまうんじゃないかと思うほどだ。しかし、金子ジム時代からの問題点はディフェンス力だった。 私は、彼が来る日には決まってグローブをはめ、実戦に似せたディフェンスの練習を課していった。それまで"ディフェンス"に焦点を絞った練習をしてこなかった為、スパーリングでパンチをまともに受けることが多かったが、日に日に彼のディフェンス能力は向上していった。 サンフランシスコとの調整はうまく進み、こちらの体制が整えばいつでも受け入れてくれることになった。しかし昨年は、いよいよアメリカ行きの話が具体的になり始めたと同時に、大きな芝居の仕事が入ってしまったり、アキレス腱断裂やその他ケガによるアクシデントに見舞われたりと、ちょっと不運続きだった。年が明け、新たな気持ちで再出発してもらいたい。あとは彼の気持ちひとつだろう。 ここまで触れなかったが、やっぱり触れよう。彼はもうすぐ37歳なのだ。時間はもうない。それでも彼が望むのであれば、私は協力を惜しまないつもりだ。でもそれもあと僅かだろう。あと1年?2年?―どうしたって肉体的限界はやってくる。急ごう!! 私の現役時代に、彼がプレゼントしてくれたイラストがある。今ではジム看板やホームページの表紙にも使わせてもらっているモノだ。右手を高々と上げ、遠くを見つめるひとりのボクサーが描かれている。原画の片隅にはこんな言葉が添えられていた。 "世界は今日も君の中にある"
新田ジム 最新情報
・ 2/5(木)新田ジムオープン1周年を迎えました。 ・ 2/8(日)第四回新田ジムスパーリング大会が行われました。今回は女子のスパーリングも行われ、大変盛り上がりました。 ・ 2/10(火)のプロテストで、岡田祐也、笈川慎也、前田弥の3名は、揃って全員合格しました。これで新田ジムプロ選手は合計10名となりました。
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