オープン前に入会手続きにやって来た2人の面白い若者がいた。
　ひとりは西君、23歳。普段は小さな自動車整備会社で働いているが、改造車デザインのスペシャリストとして、業界では雑誌にしばしば取り上げられる程の有名人。自らの愛車シーマも、爆音とともに街を走れば、人がみなふり返るくらいの"イカす"仕様だ。車高が低すぎて、平でない道は徐行しなくてはならないというのが難点だが・・・。彼はバイクの事故で右足にボルトを埋め込む程の大ケガを負い、そのリハビリが目的でジムに入会してきた。
  もうひとりは星君、同じく23歳。中学時代に横浜フリューゲルスのジュニアチームに所属していた程、サッカーの才能には秀でていたが、彼女にふられてヤケになり、カゼ薬を大量に服用して体を壊してしまった。どうしてカゼ薬なのかよく分からないが、いわゆる"薬物"でないことだけは確からしい。プロのジュニアチームに所属していたとは思えない程、貧弱になってしまったボディを鍛え直す目的でジムに入会してきた。
幼なじみの2人は非常に仲が良く、ジムオープン当初の良きムードメーカーだった。少々無駄ばなしが多く、新米会長に注意されることもあったが、彼らには"場"を明るくする不思議なムードがあった。
"天然ボケ""パンチの打たれ過ぎ""能力を超えた仕事の質と量"などのせいだろうか、最近私は物忘れが激しい。某Yジム会長の物忘れの激しさも、業界では有名だ。奥さんと2人で外食に出かけた時のこと、駐車場に車を取りに行ったまま、奥さんを忘れて自分だけ帰ってしまった―というエピソードは、ご自身が出された著書にも書かれている。昨日試合を終えたばかりの選手に、「お前最近試合やってないなあ・・・」なんてのはしょっちゅうらしい。それが笑えない程、私の物忘れもかなり激しくなっている。「お前、何かアルバイトやってるのか？」「田舎はどこだっけ？」などなど、同じことを何回も聞くのは当たり前。考えてみて欲しい。西君と星君？―間違えずに呼べるようになる為には、かなりの努力と日数を要した。
   やがて星君は転職の為にジムを退会し、現在は新しいフィールドで頑張っている。一方西君は、リハビリ目的で入会したにもかかわらず、思わぬボクシングの才能を持っていた。入会当初は、シャドーボクシングが下手くそで教えるのに骨が折れたが、ヤンチャ時代の実戦の賜物だろうか、スパーリングをやらせてみると、非凡な身のこなしにとても驚かされた。見かけによらず？朝のロードワークも夕方のジムワークも真面目にこなす彼は、めきめきと上達し、入会から半年というスピードでプロテストに合格してしまった。そしてその3ヶ月後にはデビュー戦を勝利で飾ってしまった。もちろん早ければ良いというものではないが、彼の才能と努力は正当に評価して称えたいと思っている。それにしても「リハビリ目的」の西君がねえ・・・

・ 12月17日（水）後楽園ホールにて、いよいよ新田ジム4人目と5人目のプロ選手のデビュー戦が行われます。
契約60kg　ハンマー浜里（新田）デビュー　4R　島田武士（M･T）1L
契約58kg　志賀　悠（新田）デビュー　4R　桐島一寿（レパード玉熊）1L