ショーセイの新米ジム会長奮戦記

新田 渉世 
(元東洋太平洋バンタム級王者)


 日仏ハーフ、フランシスの入門

 

  オープン時、手が回らずに何とか間に合わせで作った「入会申込書」は改良を加えながら後々までそのまま使用されているが、そこには各人の"人生の縮図"が描かれている。大変興味深いのと同時に、それぞれの人生に関わる責任の大きさを実感したりする。
 ジムがオープンしてすぐに日本人とフランス人のハーフが入会してきた。彼の名は石井フランシス。パリで生まれ、母国フランスの大学を卒業した後、更に日本の大学を卒業した優秀な男だ。フランス語、日本語、そして英語の3ヶ国語を自由に操り、現在は語学スクールの講師や、翻訳の仕事をしている。
 フランスで18戦18勝のアマチュアレコードを持ち、「出来るならプロのリングに上がってみたい。」という希望を申し出た。しかし―、JBCのルールではプロテスト受験資格は、申請時点で30歳未満でなければならない。入会時、既に29歳だった彼は、「来月誕生日なんだ・・・」と悲しそうな目で訴えた。
無敗のレコードとはいえ、それは10年近く前の話だし、大きなトーナメントで実績を残しているわけでもない。本人は今でもロードワークやウェイトトレーニングで体を作っていると言うが、とりあえず動きを見せてもらった。「うーん、違う―」確かにその身のこなしは、染み付いてしまった気になるクセはあるものの"無敗"の片鱗を覗かせていた。
現在、プロテストの受験希望者は増大しており、申請後約3ヶ月待ちという状態である。スパーリング等の調整を考えると、彼にはちょうど良い猶予期間である。今申請しなければ、彼はプロのリングに立つチャンスを永遠に失ってしまうことになる。答えはひとつだった。
 しかし、こんなに早くプロテスト申請をする選手が出てくるとは想像もしていなかったので、どうすればいいのか全く分からなかった。当時は日本ボクシング協会と日本ボクシングコミッションの違いさえも良く分かっていなかったし、どこに何を申請すればいいのか、何を用意しなければならないのか、本当に全く分からなかった。とりあえず恥を忍んで古巣の金子ジムへ連絡し、手取り足取り教わるしかなかった。受験申請書に申請料3,150円を添えて日本ボクシングコミッションに提出し、まずは第一歩を踏み出すことが出来た。
 初心者ばかりの新田ジムで、フランシスのトレーニングはひときわ光っていた。鋭い眼光と、他を寄せ付けない集中力―。年齢的にも大人の彼は、練習生達から尊敬の眼差しで見られていた。ところが、そんな彼もトレーニングを終えるとただの"オヤジ"だった。ジムを終えた後、フランシスも交えて練習生達と食事にでかけたある日のこと、"オンナの話"ばかりで人目もはばからずに大声でケタケタ笑う姿はオヤジそのものだった。彼を見る練習生達の顔が引きつっていた。「入会申込書」には書かれていなかったもう一つの"人生の縮図"を垣間見た気がした。よい先輩になってくれることを切に願っている。


新田ジム 最新情報

1月26日(月)後楽園ホールにて、西禄朋、竹内俊介のデビュー第二戦、そして佐藤祐樹のデビュー戦が決まりました。

ウェルター 西禄朋(新田)1勝 4R 小林英樹(横田)1勝1敗
契約63kg  竹内俊介(新田)1勝 4R 栗原幸司(京浜川崎)2敗
契約51.5kg 佐藤祐樹(新田)デビュー 4R 亀井利夫(京浜川崎)2敗

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   携帯用は:http://nittaboxinggym.sugoihp.com/i/

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新田渉世(にった・しょうせい) 
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗(3KO)2分

新田ボクシングジム   
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
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