ショーセイの新米ジム会長奮戦記
新田 渉世
(元東洋太平洋バンタム級王者)
“テイク”ばっかりで悪いけど……
強面トレーナーS君と共に、新田ジムを支えてくれているもうひとりのトレーナーYS氏について話そう。YSトレーナーはS君と同じ金子ジム時代の後輩で、私とはよくスパーリングをした仲だった。彼は大学生時代にプロボクサーになり、卒業後は某企業に就職してサラリーマンボクサーとして頑張っていた。就職してからは埼玉の営業所へ配属された為、オサムジムに通いながらプロのリングに上がり続けた。以来、長い間会うこともなく疎遠となっていた。 久しぶりに彼と再会したのは、今年の1月―後楽園ホールで行われた本望信人(角海老宝石)VS藤田和典(倉敷守安)の試合会場だった。私はジム開設にあたり、Sトレーナーの他にもうひとり手伝ってくれる人間を探していたところだったので、久しぶりに再会したYS氏にその場で打診してみた。その日に即答はもらえなかったものの、ジムオープン直前に「不規則勤務になりますが、それでもよければ手伝わせて下さい。」という電話をもらうことが出来た。 YSトレーナーは、仕事が終ってからジムに来ると夜9時くらいになってしまう。それからラストまでの時間、体力づくりやダイエット目的の会員を中心に指導をし、ジム終了後の掃除や片付けまで手伝ってくれる。ジムを11時頃出ると、家に着くのは日付が変わる頃になってしまう。休日でもスパーリング大会やアマチュアの試合があれば、張り切って遠方まで駆けつけてくれる。奥さんと小さい娘さんがいる彼の家庭崩壊は大きな心配の種だが、自分の時間を削って"仕事""ジム""家庭"をこなしてくれているようだ。「もう崩壊していますから心配しないで下さい。」と笑う彼の瞳が潤んで見えるのは気のせいだろうか??? そしておそらく一番大変な"新米会長の愚痴を聞く(言ってはいけないのだが・・・)"という仕事も、嫌な顔ひとつせずに務めてくれる。 "くれる、くれる"のしてもらいっぱなしだが、立ち上げ時の苦しい時には"Give
&
Take"のバランスは取りようもない。「ホント助かるよ。もう少し楽になったら、バイト代くらい出すから待っていてくれ。」―そういうとYSトレーナーは、また嬉しい言葉を投げかけてくれる。「トレーナーをする機会を与えてもらっただけで幸せなんです。不規則で反対に申し訳なく思ってるんです。」 YSトレーナーには時々"謝礼"を手渡したり、食事に誘ったりして感謝の気持ちを伝えている。恐縮しながらそれを受け取るYSトレーナーは、Sトレーナー同様、何でも相談出来る頼もしい存在として新田ジムを支えてくれている。金子ジム時代に、時々スパーリングをしたことしか特に印象の残っていなかった人物が、こんな形で再開し、深く関わるようになるとは思ってもいなかった。 一般企業のサラリーマンとして、すぐれたバランス感覚を持つYSトレーナーに愚痴を聞いてもらいながら、新米会長は何とか平常心を保って荒波の中の航海を続けている。
新田ジム 最新情報 ・11/13(木)東京後楽園ホールで行われたプロテストを受験した2名の内、1名が合格しました。これで新田ジムが生んだプロ選手は合計7名となりました。
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