ショーセイの新米ジム会長奮戦記
新田 渉世
(元東洋太平洋バンタム級王者)
近隣ジムに挨拶回りで、ドキッ・・・
何の挨拶もなく近隣で同業種を始められたら、誰だって良い気持ちはしない。資本主義が自由競争の上に成り立っているといっても、やはり礼儀を欠いては同じ業界でうまくやっていくのは難しい。いかにも日本人的発想かもしれないが、私はひとまず礼儀を重んじる方針でいくことにした。 全ての東日本ボクシング協会加盟ジム、及び個人的にお付合いのあるジムについては挨拶状を送った。そして同じ県下のジムには、一件ずつ電話で挨拶をした。競合と成り得る近隣ジムについては直接訪問をして挨拶することにした。 直接訪問のリストに挙げたのは、同じ沿線のOジム、Sジム、Yジム。スムーズに話が進むよう、事前に私の出身ジムであるKジム会長(現名誉会長)に、ひとこと根回しをしておいていただいた。「よろしく言っておいたからね」とGOサインが出た後、順番に電話でアポを取った。 初めにOジムに電話をかけた。Oジムはかつて私が日本タイトルに挑戦して敗れたT選手がいたジムだ。心中複雑ではあったが意を決して電話をかけると、会長は外出中だった。「ご挨拶に伺いたい」と用件のみ伝え、翌日再び電話をすると「出張で2,3日戻らない」とのことだった。その後何度かかけ直したがなかなか捕まらず、取次いでくれたOジムトレーナーから「新田さん、会長も新田さんの気持ちは良く分かったからもういいって。わざわざ来なくても大丈夫だよ。」と言われた。結局、1軒目のOジム会長には手紙を書いて失礼することにした。 次に電話をかけたのは、現役中からよく声をかけて可愛がってくれたSジム会長。距離的に一番近いSジムは、最も競合する可能性が高かった。またまた意を決して電話をかけると「おう、新田君か。聞いているから大丈夫、大丈夫。わざわざ来なくていいよ。大変だけどな、お互い頑張ろうな!」と、さっぱりと笑ってくれた。暖かい言葉が嬉しかった。2軒目のSジムも、電話で話が済んでしまった。 最後にYジム会長に電話をすると、「分かりました。お待ちしております。」―やはりすべて電話で片付くなんてわけにはいかない。菓子折りを持ってYジムを訪ねた。「新田さん、この業界はね、順番をひとつ間違えるとえらい事になるからね。気を付けた方がいいよ・・・」(ドキッ)3軒目のYジムではチクリとやられてしまった。つまり、「ジムを開設したのでよろしく」ではなく「ジムを開設したいのですがどうでしょう」という挨拶が先だということなのだ。ひとまずは礼儀を重んじる方針でやっていく以上、それはもっともな話だと思った。とはいえ、もうジムの内装も看板もほぼ出来上がり、会員集めも開始している以上「ジムを開設したのでよろしく」としか言えなかった。 特に問題なく(?)3軒の近隣ジムへの挨拶を終えられたが、チクリとやられた所は今も時々うずいたりしている。
新田ジム 最新情報 8月23日(土)の茅ヶ崎市アマチュア大会に、黒田雅之、阿部陽一、竹間竜一の高校生3名が出場することになりました。新田ジムとしてはアマチュアの試合参加はこれが初めてとなります。 8月24日(日)はJBスポーツのスパーリング大会に、関谷昌亮、山中昂、中学生の広野拓也の3名が出場します。中学生離れした広野拓也のボクシングセンスが、実戦でどこまで通用するかが楽しみです。
|