お店じゃないんだけど……
これまで「会員確保」の為、様々な手を尽くしてきた。採算ラインは最低でも70人。会員ゼロでも数ヶ月は運転資金で回せる計算をしているとはいえ、それはあくまで最悪のケースであって、より充実したジム運営の為には少しでも多くの会員を確保する方が良いに決まっている。"2月5日オープン時点で会員100人!"・・・到底無理と思われる数字だったが、敢えて目標を高く掲げた。
そしていよいよ、オープン約1ヶ月前から入会の受付を開始した。記念すべき会員第一号は、サラリーマン時代にお世話になった上司のSさん。会社の中では、ジム設立の意思を最初に伝えなくてはならない人物だった。一部上場企業の常務執行役員という雲の上の存在だったが、私をその会社に入社させてくれた大恩人だった。不義理極まりない選択をした私に対し、Sさんはこう言った。「条件が3つある。オレを会員第一号にすること、駅から徒歩5分以内にすること、シャワーを設置すること・・・」―なんという男気だろうか。「しっかり頑張れよ」という温かい思いが、ずしりと伝わってきた。後日、本当に入会申込書を送付して下さり、会員第一号(幽霊会員だが)として毎月の会費を入金し続けて下さっている。「いつか必ず恩返しをするぞ!」
受付をスタートしたものの、相変わらず雑事に追われていたオープン前の1月13日、ついに一般の入会申込み(実質上の)第一号がやって来た。ヘビー級でいけそうな体格のY君(22歳)は、きちんと入会申込書を書いて持って来た。「いらっしゃいませ!」思わず女性スタッフのKさんは叫んだ。「Kさん、Kさん、お店じゃないんだから・・・」本当に人が集まるのか、不安な気持ちは私も同じだったが、ボクシングジムで「いらっしゃいませ」はちょっとね・・・
入会金と初月度会費を受け取る手が震えるのをごまかしながら手続きを進めた。全日本ボクシング協会で規定されている入会金は18,000円だが、オープン前は15%OFFの15,300円に設定して、入会検討者の背中を押す作戦をとった。月会費は規定通り12,000円に設定し、Y君からは合計27,300円を受け取った。価格破壊が進む昨今で、この料金設定は周囲から(もちろん新田ジムを応援して下さる方々から)多くの非難を浴びた。スポーツクラブなどでも、入会金ゼロ&時間別割引料金が当たり前の時代である。しかしそれは、"市場調査"と言っては大げさだが、多くのジムの様々な試みとその成功例、失敗例について情報を集め、熟慮した末に出した結論だった。それだけに、Y君から受け取った27,300円には一層手が震えた。
無事手続きを終え、満足そうにジムを出てゆくY君に向って、女性スタッフのKさんは叫んだ。「有難うございました!」
「Kさん、Kさん、お店じゃないんだから・・・」
新田ジム 最新情報
東洋太平洋ヘビー級8位の高橋良輔(金子)がメインを予定している、10月1日(水)のゴールデンチャイルドボクシングVol67にて、新田ジムプロ選手3名のデビュー戦が下記の通り確定しました。
フェザー級 石井フランシス vs
嶋崎光雄(横田)
1戦1敗
S・ライト級 竹内俊介
vs
鈴木裕之(草加有沢) デビュー
契約68kg
西 禄朋 vs 高野悠一郎(横田)
デビュー
バックナンバー7、8で記述した韓国の師匠 洪
秀煥(ホン・スー・ファン)の息子 ダニー洪も来日し、4回戦で出場予定です。