新田 渉世 (元東洋太平洋バンタム級王者)
「ボクシング・ジムはお断り」の大家が多くて・・・ ジム開業を決意してからというもの、いきなりスポンサーの話が破談になったり、飲み屋で銃を持った強盗に襲われたりと、のっけから楽しいこと(?)ばかり続いている。ともあれ今更後へは引けない。私は一段と身勝手な使命感に燃えて、ジム開設準備にとりかかった。 公的融資の獲得を目指し、諸々の手続きを進めるのと平行してジムの物件探しにも精力的に動いた。物件の立地条件や必要経費も融資の審査対象となるからだ。それにしても、融資が確定する前に不動産の契約をしなくてはならないというのは何か理不尽な気もするが、とにかく規則に従って進めるしかなかった。 ところがここでまた楽しいこと(?)が私を悩ませてくれた。立地条件の良い物件を1ヵ月位かけて見て回り、気に入った物件が見つかったので賃貸の申し込みをした数日後―。「大家さんがねえ、ボクシングジムはちょっと・・・って言うんですよ。」愛想の良かった不動産屋がしらけた口調で私に告げた。もしかしたらとは思っていたがやっぱりそうか。ボクシングのイメージはまだまだ良くないようだ。「こんなにさわやかで誠実そうな人が借りようとしているって、大家さんに言ってくれました?」不動産屋に詰め寄ったが結局ダメだった。そして2件目、3件目と気に入った物件は同じ理由で次々と断られていった。 かれこれ10件位断られただろうか。「もう貸してくれるところなら何でもエエわい。」と、少々せまいので初めは眼中になかった物件に望みを託した。 そんな話をたまたま親しい飲み友達に話したところ、「あそこの大家さんはS市議の後援者らしいよ。相談してみたら?」とグロッキーぎみだった私に希望の光を与えてくれた。S市議は我々の共通の飲み友達だったのだ。早速S市議に連絡すると、「あの大家さんは昔ボクシングをやっていたらいしいですよ。きっと大丈夫。一緒に挨拶に行ってみましょう!」―ラッキーパンチが当たって形勢逆転といった感じである。 S市議とともに大家さんを訪ねると、気難しそうなオジサンが注意深く私を観察していた。精一杯自己PRをしてはみたが、S市議が一緒でなかったら気に入ってもらえたかどうか分からなかった。 ともかく無事物件を確保することが出来、融資申込みに必要な書類を作成することが出来た。少々せまいとはいえ、使い勝手が良い、見晴らしが良い、大家さんが協力的、などなど“住めば都”で意外と良い所が沢山見えてきたりする。ウチを断った物件のほとんどは、半年経ってもまだ“テナント募集”の看板を出していた。ウチを入れときゃよかったのに・・・。? 新田ジム 最新情報 西禄朋(23)のプロテストが7月10日に決定。新田ジム2人目のプロ選手誕生が期待されている。西は自動車の改造スペシャリストとして、その業界ではちょっとした有名人。時々カー雑誌等にも登場している。既に“あちら”では話題に火がつき始めているらしい。すぐにガードが下がるクセさえ直せば合格の可能性ありとみる。
新田渉世(にった・しょうせい) 87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。 34戦23勝(17KO)9敗2分
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