新田 渉世 (元東洋太平洋バンタム級王者)
ジム設立には金が要る! 公的資金ゲットに悪戦苦闘・・・ 会社に辞表を出してしまった以上、というより、もうその気になってしまった以上、たとえスポンサーの話が破談になったとしても後戻りする気は毛頭ない。とにかくジム設立のための資金確保に全知全能(大したことないが・・・)を傾けた。 日本経済が不況の折、スポンサーや融資の獲得は難しくなっている。お金を出してくれそうな人達の顔が頭に浮かんだが、「お金が絡むと人間関係にヒビが入ることもあるからな・・・。」今回の破談の経験も踏まえ、公的融資を得る方法を模索した。 元世界チャンピオンのLジム会長から、公的融資で資金を全額賄った話を聞き、ボクシングジム開業にも融資のチャンスがあることを知った。しかしLジム会長は何といっても元世界チャンピオン。「通常はなかなか難しい。」という話だった。ともあれ国民金融公庫、地方自治体の融資制度などいくつかの制度を研究し、市の「中小企業融資制度」の利用を試みることにした。 まずは綿密な事業計画書を作成した。商品・サービスと売上構成比、粗利益率。対象顧客と構成比。設備資金と運転資金の額と使途。立地条件等々・・・。やったこともない、頭の痛くなるような資料作りに取り組んだ。全国のボクシングジムホームページ閲覧、会長やマネージャーさん達への電話インタビュー、時には実際にジムを訪問するなど精力的に動き回り、各ジムのコース別入会金、月会費、立地条件、営業時間、会員数、面積などの情報を一覧表にまとめて、ボクシングジムに対する融資の妥当性をアピールした。 苦労してチャンピオンになったこと、国立大を卒業し教職免許を取得していること、1年間米国でボクシングに携わったこと、3年間サラリーマンを経験したこと、開設予定地域で10余年生活して人脈が確立されていること等々、本人についても有利と考えられる情報をすべて盛り込んだ 毎日パソコンや数字とのにらめっこ。電話での折衝―。サラリーマン時代と同じようなことをしている自分が少し滑稽だった。 出来得る限りのことをやりつくし、資料を金融機関に提出した。そして間もなく市の「経済局産業振興部金融課」という難しい名称の部署から呼び出しがあり、ネクタイを締めて面接に出向いた。「ユニークな経歴とユニークな申請」に、この難しい名称の部署はにわかに盛り上がっていた。後日、中小企業診断士による視察調査がおこなわれ、その結果をもって最終審査がおこなわれるとのことだった。しかし、融資が確定するまでは"蛇の生殺し"状態で開設準備を進めなければならない。ストレスの溜まる、そしてスリリングな日々が続いた。
新田渉世(にったしょうせい) 87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。 34戦23勝(17KO)9敗2分
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