新田 渉世 (元東洋太平洋バンタム級王者)
私は最近ジムをオープンしたばかりの新米会長である。 ひと言でジムオープンと言っても、これがなかなか大変なのである。 まずは金がいる−。額はさまざまだがSジムやJジムのように、お金持ちのスポンサーが“オーナー”として開業資金から運転資金までのすべてを賄ってくれるケースもあれば、Kジムのように開業資金だけはスポンサーが面倒をみてくれて、あとは自分で切り盛りするケースもある。そうかと思えば別のKジムのように、全部自己資金でやってしまう人もいたりする。人それぞれである。「いつまでサラリーマンやってるのよ。人生はあっという間。お金の心配はしなくていいからジムをやりなさいよ。」昔の後援者からそう言われたのは去年の夏のことだった。いずれジムをやりたいとは思っていたが、当時一部上場企業のサラリーマンとして妻子を養っていた私にとっては、それなりに大きな決断だった。 決めたら早いのは昔からの性分。早速会社に辞表を出し、残務処理と引継ぎに約1ヵ月の時間をあてた。希望に胸を膨らませつつも、共に汗を流してきた同僚や上司に対する後ろめたい気持ちが共存していた。そして引継ぎもほぼ終了し、退社の日を迎えようとしていたある日のこと、後援者の口から悪夢のような言葉が発せられた。「ホントに、ホントにごめんなさい。私どうしたらいいんだか・・・」 突然、融資の話は水に流れた。理由は後援者の“お家事情”。納得するしかない内容だった。「心配しないで下さい。何とかなりますから!」と強がってはみたものの、さてどうしたものか。今更後へは引けないし・・・ 別のスポンサーを見つけるにしても、どこかで融資を受けるにしてもとにかく初めてのこと。まずは情報収集に奔走した。ここ10年位の間にジムオープンした若い会長さん達に、かかった費用とその資金繰りの方法について聞いて回った。 ジムオープンにかかる費用は、平均すると1000万円から1500万円(もちろん、もっとかけているところもあるが・・・)。加えて現在の規約では、プロのジムとして日本ボクシング協会に加盟するには高額の加盟金を支払わなくてはならない。それは通常なんと1000万円!!但しチャンピオン経験者については、世界王者300万円、東洋太平洋王者400万円、日本王者500万円と多少優遇措置がとられている。 幸運にも?東洋太平洋チャンピオン経験者だった為、加盟金は400万円で済む。とは言え、開業に必要な総費用はどんなに安く見積もっても1000万円を下らなかった。 「心配するな。何とかなるさ!」とりあえず自分にそう言い聞かせた・・・。?
新田渉世(にったしょうせい) 87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。 34戦23勝(17KO)9敗2分
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