キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

BARRERA-MIURA.JPG
三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

 ボクサーの妻たち


 国語辞典で「内助の功」を引くと「家庭にあって、夫の社会活動のささえになること」とある。ボクシング界でもボクサーの陰になり日向になり、夫を助ける妻たちがいる。映画「ロッキー」で主人公のシルベスター・スターロン演じるロッキー・バルボアの恋人からやがて結ばれ、シリーズ中重要な役柄を務めるエイドリアンという女性がいた。ロッキーのキャリアが進行し、数々のビッグマッチを経て地位と名声を広めるとともに、妻の彼女もステイタスをアップさせていたような印象がした。

 現在、日本ボクシング界のオシドリ夫婦といえば、やはり徳山昌守と崔仁淑さんだろう。試合終了後、リング上でのプロポーズから始まったアツアツカップル。今では夫人が徳山のキャンプに同行するほどの献身ぶりだ。

 アメリカでもこの手のカップル少なくない。まず元バンタム級王者で、今もトップシーンを張るポーリー・アヤラとレティー夫人。確かアヤラが辰吉と対戦前、筆者はラスベガスで会い、カリフォルニアで行った前哨戦を取材した時も二人はベッタリだった。長くいっしょにいると、だんだん愛情も希薄になるのではと思うのは、筆者のヤッカミだった? 今回シリモンコン−ヘスス・チャベス戦でテキサスに行き、彼らに再会したが、以前と変わらぬ熱愛ぶりにアテられたものだ。アヤラは「妻であり、友達であり、自分のアイドルでもあるんだ」と平然とノロける。

 もっともレティー夫人は美貌だけで注目を集めるのはなく、徐々にアヤラのマネージメントにも進出しているような印象がする。昨年、モラレス戦でつまずいたアヤラだが、今後彼女との二人三脚で、またビッグマッチの道を切り開くかもしれない。頼もしいパートナーというべきだろう。

 中米エルサルバドル人として初の世界王者に就いた現IBF世界J・ライト級王者カルロス“ファモッソ”エルナンデスのベロニカ夫人も、夫の行くところには必ず帯同する“日向系”レディの一人。何でもすでにマネジャーライセンスを取得してエルナンデスをコントロールしているとか。以前、ロサンゼルスのジムで特訓に明け暮れた某日本人チャンピオンも「なんてきれい…」と声を上げ
たほどのアメリカでは珍しい?清楚な美人。というのも彼女はメキシコ生まれで、心理学者の肩書きも持つというから驚きだ。ジムワークに同行し、夫を静かに見つめる瞳は真剣そのもの。ジープのオープンカーに彼女を乗せ、ロスの街を走り抜けるエルナンデスの幸せそうな顔が忘れられない。

 もう一人のエルナンデス、カルロスとも戦ったことがある元2階級制覇王者ヘナロ・エルナンデスのリリアナ夫人は上記の女性たちに比べると、表に出る頻度は少ないものの、ヘナロにはかけがいのないワイフに映る。何でも高校生時代、彼女が働いていたハンバーガーショップで二人は知り合ったとのこと。彼女もすごくチャーミングで、ヘナロでなくとも毎日店に通いつめたくなるほどの笑顔を振りまく。ヘナロがテレビ解説の仕事でラスベガスに出かける時は、よく二人でカジノのスロットマシーンと格闘している姿を見かける。

 ところで、身を挺して夫を支えている点ではジョニー・タピアのテレサ夫人に触れないわけにはいかない。「自分が地獄の生活から更生できたのも彼女のおかげ」と夫に言わしめるテレサ夫人は、タピアの狂気ストーリーの中では必ず登場するのだが、以前はあまり表に立たない女性に思えたものだ。それこそロッキー1のエイドリアンの雰囲気、タピア同様スキャンダラスな人生を送った俳優・勝新太郎と妻の中村玉緒の関係に似ていたかもしれない。だが、いつの間にかマネジャーを名乗り出した彼女は、一連のタピアのスキャンダルを体験しながら業界でも一目置かれる存在になりつつある。確かにタピアは問題を起こす男だが、逆にそれをマッチメーク上でうまく売り込む術を会得しているようにも感じられる。それにしてもタピアのような男を随従させるなんて、どうすればいいのだろう。ドラッグ禍から這い上がってリングで大金を稼いだタピアは、彼女にいくら感謝しても感謝し切れないはずだ。

  コラム一覧 バックナンバー


(C) Copyright2003 ワールドボクシング編集部. All rights reserved.