キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

海外での日本選手の評価は? − IBOランキングを読む


 レノックス・ルイス−ビタリ・クリチコ戦のプレス・キット(資料)の中に興味をそそる小冊子が含まれていた。題して「ザ・IBOトップ100」。IBOとはあまたあるマイナー団体の一つで、国際ボクシング機構の略称。ルイスがクリチコの左目負傷により防衛を果たしたのはメジャー団体WBCとこのIBOのベルトだ。

 A4版のその小冊子をめくると、タイトルどおり各クラス1位から100位までのボクサーのランキングが掲載されている。ただし、S・フライ級からミニマム級の4クラスは50位までに減少されているが…。ともあれ、名前、国籍、年齢、タイトル(前王者も)、最近6試合の勝敗、戦績、ポイント(この数字で順位が決まるのだが、その根拠は不明)と資料としての活用度もなかなかだ。この団体は以前、マルコ・アントニオ・バレラやポーリー・アヤラらがメジャー団体の承認を拒否した時にいち早く試合を認定するなど、”融通性”を発揮。注目度や存在価値は高くないものの、ランキングも比較的公平との評判を得ている。
 独自に認定する王者はルイス以外はほとんど無名選手ばかり。強いてあげると、ミニマム級のノエル・ツニャカオ(比国)とS・フェザー級のカシアス・バロイ(南ア)が名を知られている程度。ただ、ユニークでフェアに感じられるのは、IBOチャンピオンであっても、各階級のランキングに組み込まれていることだ。たとえば、S・フライ級王者はルンガ・ヌトンテラ(南ア)という選手だが、彼は同クラスの16位に名を連ねる。また、S・ミドル級王者ブライアン・マギー(英国)は17位という具合だ。「タイトルはタイトル、実力は実力」と割り切っている印象がしておもしろい。

 さて、ランキングを見渡すと、もちろん日本人ボクサーの名前も見つけ出すことができる。現役唯一の王者徳山昌守はS・フライ級1位と、実質的にチャンピオンとして扱われている。このクラスでは引退したセレス小林が6位、川島勝重が15位、川端賢樹が17位、石原英康が24位、小縣新が25位、これもリタイア組だが、佐々木信吾が29位、プロスパー松浦が33位、有永政幸が43位、中村好伸が44位、そしてなぜか日本ノーランクの仁木一嘉が45位にランクされている。
 注釈を見ると、順位はすべてコンピュータ集計によって割り出されているとのこと。いわば、機械の“冷徹な目”によって算出されているのだが、入力する精度に関してはS・フライ級の例のように、下位に行くとかなり大ざっぱな感じもする。ただ、強打のアレクサンデル・ムニョス(WBA)やフェルナンド・モンティエル(WBO)らを押さえて実績でまさる徳山をトップに置くところは好感が持てる。また、先日徳山に挑んだ川島の15位も納得できる位置ではないか。アメリカをはじめ、世界的にはリング誌のランキングが信用性があるといわれるが、「アメリカでの露出度が高い選手ほど優遇される」という傾向も無きにしもあらずだ。
 ちなみにS・フェザー級を見ると、1位はフレイタス、2位フィリップ・ヌドゥ、3位カサマヨール、4位ヘスス・チャベスの順。WBC王者シリモンコンはこのクラスでの実績で劣るせいか、6位に落ちる。このクラス日本人最高位は前OPBF王者パンサー柳田の26位、そしてコウジ有沢33位、現日本王者本望信人37位、杉田竜平54位、藤田和典69位と続く。また、再起した長嶋健吾はライト級の46TOKUYAMA-KAWASHIMA FIGHT 2.JPG - 10,105BYTES位。彼らのうち何人かはメジャー団体では15位以内を占めるコンテンダーである。しかし、このIBOというマイナーでなじみの薄いランキングに列挙される世界各国のボクサーたちの名前を眺めると、彼ら日本人選手には辛らつな表現だが、現状の実力が反映されていると言っても過言ではないかもしれない。他の階級にしても同様な傾向が見られるようだ。

 何も筆者は、このIBOトップ100を全面的に信用しようと言っているわけではない。当人さえも、ほんの遊びの気持ちでページをめくっていたのだ。マニア向けという言い方もできる。ただ、有力プロモーターやマネジャーたちの勢力図的な傾向が強いメジャー団体ランキングに比べると、率直に言って新鮮でフェアな印象もする。順位は高くなくとも「日本選手にもそれなりに関心が寄せられているのだなぁ」という気持ちもした。願わくば、徳山のように正当な評価を勝ち取る実力者の台頭を待ちたいところだ。

★ミニニュース

 年頭から中断していたメキシコシティの土曜日の定期ファイトが半年あまりの空白期間を経て、7月12日から再開された。プロモーターはドクター・ファウスト・ガルシア。彼は84年ロサンゼルス五輪ボクシングのメキシコ・フライ級代表選手だった人物。最大手テレビ「テレビサ」のサポートが得られたもので、ダブルメインイベントではフリオ・サラテ(WBCバンタム級8位)がユーリ・アルバチャコフに挑戦したオスカル・アルシニエガに5回終了TKO勝ちしてスペイン語圏王座を防衛。また、ヘナロ・ガルシア(WBCバンタム級3位)がフリオ・セサール・アビラを8回TKOで下し、カリブ連盟王座を防衛した。

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