キャッチ三浦の

アメリカン・シーン

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三浦  勝夫
(ワールド・ボクシング米国通信員)
M.A.バレラと筆者

前途多難思わせる ラクバ・シムの米国デビュー

 プロデビューは17歳になってから、37歳以上のリング定年制、4回戦は2度ダウンで自動的にKO負け…。日本人の数字を尊重する習慣、線を引きたがる性格は、ボクシング界にも少なからず影響を及ぼしている。
 その顕著な現れが、世界タイトル戦などで「WBA○位」といった肩書きを重要視する姿勢だ。通を自認するファンなら、今さら「ランク1位が最強で、10位はかなり弱く、15位なんて問題外」なんて見方をする人はいないだろう。各団体が発表するランキングはプロモーターやマネジャーの勢力分布図という見方もできるわけで、正直(残念にも)挑戦者群の真の実力を反映しているとは言い難い。海外に住んでいると、「チャレンジャーは世界何位だろうと関係ない。とにかくランカーに相応しい試合を披露してほしいし、好ファイトを期待している」とだけ一般のファンは念じていることに気づく。試合前の選手紹介でも、経歴や出身地にこだわりを示すわりには、ランク何位ということに触れることは多くない。
 だが、とやかくいう筆者も月々送られてくるワールド・ボクシング誌で、めくる頻度が一番多いのが、各ランキングが掲載されているページである。記事を書いているとどうしても「ええと、この選手はどこの団体の、何位ぐらいにいたっけ」と自然に手が動き、ランキングを見てしまうのである。いつの間にか「ランクに入っている以上は、まあまあの実力者」という意識が頭の中に出来上がってしまったようである。
 同時に以前、日本のあるジム関係者から「専門誌で一番見る個所はランキングだ」といわれたことが思い出される。
 さて、WBA・S・フェザー級2位で元王者のラクバ・シンが米国デビューを果たした。4月13日、マイアミのリング。直前にこのニュースをインターネットで拾った筆者は寝耳に水という印象がしたが、当日全米に放映された試合では、まず畑山隆則を右一撃で倒しストップしたシンの雄姿が流れ“モンゴリアンの襲来”をアピール。
 アジアのトップボクサーが本場でどんなパフォーマンスを披露するのか、興味津々。対戦者のルイス・ビジャルタはペルー出身の変則ファイター。27勝中23KOと(3敗1分)パワーを秘めるが、一番最近の試合でホープの一人、ブライアン・アダムスと好勝負を演じながら終盤KO負けと、シンの力を測定するには格好の相手に思えた。シンは初回こそ固さが感じられてビジャルタの右をもらったが、2回、3回と前進してプレスをかけ、右アッパーなどを痛打。特にジャブでグラつかせるなど、パワー健在なところを見せつける。ところが4回開始ゴング直後、いきなり左を出したシンに、ビジャルタはそれを防ごうとして右足首を捻挫するアクシデント。リング上に倒れ込んだままドクターストップがかかった。
 裁定はシンのTKO勝ちと発表されたが、ノーコンテストに覆る可能性もあり。盛り上がりかけたところだけに残念な結末となったが、それまでのシンにはどんな評価が与えられるのだろうか。彼は手数を出し、プレスをかけ続けたものの、ミスブローが目立った。ラフな相手に対してパンチの欠き、不用意なパンチをもらっていた。これはKO勝負以外でアメリカで勝ち上がるためには致命的な欠陥といえる。辛口評になってしまうが、現在シンより下位に位置するランカーの中には彼より強そうな選手がウヨウヨいるような気がする。
 画面で見たシンには当日のプロモーター、ダン・グーセン氏がド〜ンと後ろについていたから、今後もアメリカでファイトし続けるようだ。また、ある日本人関係者の姿も見受けられたので、横浜さくらジムとの提携も続行中なのであろう。それでも冷静に彼の試合に分析を入れると、アジア人特有の?欠点が露呈し、前途多難を感じさせた。彼のアメリカでの活躍に大いに期待したいが、このデビュー戦の出来を謙虚に反省し、精進する姿勢を崩してもらいたくない。

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