夢かうつつか、酔いどれ記者が行く   芦沢 清一


 「ワールド・ボクシング」が新たに開いたボクシング情報ホームページの中で、コラムを担当することになった元デイリースポーツ記者の芦沢清一です。 デスマス調で自己紹介したが、以下はデアル調で話を進めたい。
 W・Bの前田衷編集局長が提案したコラムのタイトルが「夢かうつつか、酔いどれ記者が行く」だった。私にも考える余地を残した提案であったが、紙片に記されたタイトルを見た瞬間、これしかないと思った。
 パンチドランカーならぬアルコールドランカーの私が、過去と現在を問わないボクシング関係者とのお付き合いを語るにあたって、○年○月○日のことなど、とても記すことができない。うつつな思いで記すことができるコラムの表題が、いたく気に入った次第だ。 正確な過去の日付が求められるニュース記事の場合は、日本ボクシング・コミッションや、W・B、ジョー小泉さんの主宰する「リングジャパン」などに問い合わせて、原稿を書いたものだ。頭脳が正常であることが要求された。
 3年前にデイリースポーツ社を定年退職して、今は後任の木村直樹記者を補佐する身。ニュース原稿はほとんど書かないので、正確 を要する日時、地名、人名にあまり気を使わないで済む。
 W・Bで「時評」というコラムをもらっている。日々のニュースと違って、上記の3要素を調べるのに、あたふたすることはない。「時評」の論旨には賛否があり、関係者からクレームが付くこともある。人それぞれの考えがあるので、異見(意見ではない)としてうかがっておく。 「時評」を読んで想像するに、私は正論を振りかざす正義感に思えるかもしれない。本人もそのつもりではいるのだが…。実際は女房子供泣かせの酔漢にしかすぎないのだ。ここで宣言したい。私は偽善者であるより偽悪者でありたいと。 もちろん「時評」では正論を主張し続けて行きたいと思うのだが、こんな遊びのページをいただいたからには、面白おかしいエピソードを酒癖に交えて紹介し、別な一面からボクシングに接してもらいたいとも思う次第だ。
 今回はコラム掲載の第1回目とあって、自己紹介になった。どういう具合に酔いどれ記者が行くのか、具体性に欠けたと思う。それは今後のお楽しみに。 今月16日、元日本フライ級チャンピオン、ピューマ渡久地が、東京・港区の一当地に開いた「ピューマ渡久地ボクシングジム」のオープン式が行われた。現役時代に“問題児”された渡久地氏の瑕疵(かし)は、酒乱であった。今はそれはないと確信する。
 現役時代の彼を非難する立場にありながら私はなぜか憎めなかった。同病相憐れむというやつか。渡久地氏をプロで育てながら、最後には離反されて、侘しくこの世を去った池田伸夫氏との想い出から、次回以降の連載をスタートさせたい。

 

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