N O S T A L G I A vol.5


個性豊かなつわものたち
帝拳黄金期のスター五人衆


  帝拳ジム。今さら説明するまでもなく”名門”であり”老舗”である。大正15年創立という、現在全国で約250あるプロジムの中でも最古のジムで、大場政夫、浜田剛史の2人の世界王者はじめ多数のスター選手を輩出。今も西岡利晃らを擁して「ボクシング界でもっともパワーのあるジム」であり続けている。大場を不慮の死で失ってしばらくの間を除けば、このジムから看板選手が絶えたことはなかった。
 この写真は今から40年以上前(昭和36年)、東京・王子にあったジムの改築祝いの席で撮られたスナップ。当時の帝拳は今の本田明彦会長の父、先代の本田明会長の時代である。右から高山一夫、福地健治、小坂照男、渡辺亮、そして金田森男と、当時の帝拳のトップスター勢ぞろいの図である。世界チャンピオンこそいないが、この時期は帝拳の黄金時代だったといっていいだろう。
 この中でも一番の看板は中央サウスポーのファイター小坂照男で、当時日本ライト級チャンピオン。”東洋の閃光”フラッシュ・エロルデに、東洋、世界と計5度も対戦し、唯一第2戦(昭和37年4月)で判定勝ちし、再戦で奪回されるまでのつかの間ながら、価値ある東洋ライト級王座に君臨した。現在小坂氏は札幌在住、北海道ジムのマネジャーとして後進の指導に当たっている。
  小坂のひと足先に帝拳が世界の桧舞台に送り出したのが、日本フェザー級王座を9度守った高山一夫だった。あきれるほどの強打とタフネスで一度は時の世界フェザー級王者デビー・ムーアをあわやダウンのピンチに陥れるなど大健闘。2度の世界挑戦以外にも、ライバル勝又行雄との死闘は今もファンの間で語り草になる名勝負だった。現在出身地の神戸在住。
 福地健治はどちらかというと地味なボクサーだったが、昭和37年7月のラストファイトで東洋ウェルター級王座を奪還した一戦は一世一代のど派手な逆転劇。4回に3度もキャンバスに這わされながら(当時はまだ1ラウンドに3度ダウンで自動的にKOとはならなかった)、同じ回に逆に右を返してダウンを奪い返すなど、不屈の闘志で判定勝ちにこぎつけた。若くして病死したが、現在長男の福地勇治氏がJBC審判として活躍中である。 渡辺亮はサウスポーの猛烈ファイター。当時世界2位にランクされた比国の強豪バート・ソモジオから東洋ベルトを奪った試合で信じられない逆転KO劇を演じ、モンタンテ戦でも逆転ドラマを再現して"逆転男"といわれた。引退後は埼玉・川口で試合ぶりそのままに「スタミナ亭」という中華の店を営んでいたが、数年前にボート場の警備員に転職したという知らせをくれた。
 最後に金田森男。高山の弟分のような存在で、長身のストレート・パンチャーで、素質に恵まれながらプロ9年目にしてようやく日本ミドル級王座に就くという遅咲きだった。引退後はルーツの北朝鮮に渡り、いまもボクシングに関係した仕事をしているらしい。
 以上、それぞれが個性豊かなボクシングでテレビ・ボクシング全盛期に大いに輝きを放った帝拳黄金期のスター五人衆。テレビ・ボクシングが一局で週に一回ゴールデン・タイムで生放送されていた時代だけに、彼らの活躍の場(主に日本テレビの「ダイナミック・グローブ」)はいくらでもあったのである。

● 今日は何の日? ●

June

21/土 大場政夫が無冠最後の試合でベビー・カロナに8ラウンドKO勝ち(1970)。
    この4ヵ月後に世界フライ級チャンピオンとなる。
 

22/日 ジョー・ルイス、ジェームズ・ブラドックを8回KOに沈め、世界ヘビー級王
    座獲得(1937)。同じくルイスが、ドイツの宿敵マックス・シュメリングを初回
    KOに破り、王座防衛。この試合は「世紀の対決」として注目された(1938)


YURI WINS.JPG - 18,322BYTES23/月 ユーリ海老原(後の勇利アルバ
    チャコフ)がムアンチャイ・
    キティカセムを8回にKOし、
    WBC世界フライ級王座獲得。
    旧ソ連選手として初の世界王者
    となる(1992)


24/火   ヘビー級の名チャンプ、ジャ
    ック・デンプシー、米コロラド
    州マナッサに誕生(1895)。
    矢尾板貞雄のラスト・ファイ
    ト、後楽園ホールでプリモ・フ
    ァミロを撃退し東洋フライ級王
    座守る(1962)


25/水  ジョー・ルイス、ジャージー・ジョー・ウォルコットを11回にKOし、世界ヘ
    ビー級王座25連続防衛(全階級を通じて世界王座最多防衛記録)に成功(1948)


26/木 WBA世界J・フライ級王者具志堅用高、沖縄県八重山郡石垣島に誕生
   (1955)。
   モナコで行われた世界ミドル級王座統一戦で、WBA王者カルロス・モンソンが
   WBC王者ロドリゴ・バルデスに判定勝ちし、真のチャンピオンに(1976)


27/金 アトランティックシティで行われた世界ヘビー級統一戦で、WBC・WBA者
    マイク・タイソンがIBF王者マイケル・スピンクスを1ラウンドKO勝ち
    (1988)

 

 

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