リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

リングサイドで野次を聞いた ~独善的ボクシング論

マニアの隠れ家を目指します。
中津の生渇きの臭い人はお断り。

堤駿斗とアンセルモ・モレノの1戦は体重超過特有の後味の悪さを残した試合でした。

プロでの5戦のうち、2戦をやらかしてしまったことに関しては堤に弁明の余地は無いだろう。しかし、事は本人だけの問題だろうか?

階級は適正階級なのか?・減量の計画は妥当だったのだろうか?

疑問は残る。そしてトレーナーやジムも含めたメインイベンターの体調管理という点においても問題があるのではないか。

水抜きや短期で体重を落とすことに関しての是非は問わない。

プロは結果で観られるので、減量の過程や方法はファンには関係無い。落とせたかどうかだけだろう。

水抜きをやるのなら失敗しない方法を本人も周囲も研究し尽くしてからすべきだし、それが出来なければ別の方法ですべきだろう。結果論だが、木村や大湾も減量に失敗していることを考えるとジム自体が水抜き減量に関しての認識が甘いとしか言いようがない。そして、成功率が100%でない減量方法はやるべきではない。

練習中の不慮の怪我や急病による欠場はあるかもしれないが、減量に失敗して試合を流す、または今回みたいにある意味、試合を壊すのはチケットを買ってくれた方や、その試合をまとめるために尽力してくれた有形無形の方々に関して失礼だ。

そして、ボクシングは個人競技であるが広義ではトレーナーやジムも含めたチーム戦でもある。今回の件は堤個人だけでなくジム側で真剣に考えて次に生かすしか名誉を回復する術は無いだろう。

 

ボクサーや格闘家の現役生活は長くありません。

怪我やモチベーションの低下、周囲の環境や諸事情などによりリングを離れざるを得ないときは誰でも来ます。

リング上で引退式やセレモニーをやってもらえる選手は恵まれた方で、大体がひっそりと消えていきます。

ジム側には地域王座を獲った選手の現状位は情報発信して欲しいですね。いろいろな事情があるとしてもそれはファンに対する義務だとは思います。

本人からでも意思発信はして欲しいですが。

 

1.原隆二(大橋)

※2017年5月にプエルトリコで当時のWBO世界ライトフライ級王者だったアンヘル・アコスタへの挑戦が内定してたが、怪我が理由で中止になったと記憶してます。

その後、10月に再起戦を行った試合を最後にリングから姿が消えました。同日、阿部麗也に敗れた同門の細野悟はブログで後日に引退を表明してます。まだリングに未練が残ってるのだろうか・・・

 

2.松本亮(大橋)

※ローマンとの世界戦に敗れ、再起戦で佐川にKO負けしてここまでかと思ったものの、そこから3連勝(2KO)。

2020年8月の水野戦の勝利が最後に試合をしてないが・・・

層の厚い国内のSバンタム~フェザーで次の世代の選手とも凌ぎを削る姿が観たかったのだが。

原には機動力、松本にはスケール感があり、凄く期待をしてました。大橋ジムは今でも層が厚いので二人の事を覚えてるファンも少ないかも知れませんが現役続行か否かだけでも明確にして欲しいなあと思います。

もし、自分の知らないところで進退の事を明確にしてたら申し訳ありませんが・・・

昔から武道の醍醐味は小よく大を制すと言われてました。

一方で身体の大小で不公平感が出ないようにレスリングやボクシングなどの外来格闘技は厳密な体重制が敷かれてます。

前者にはロマンを、後者にはリアルを感じます。

一方でマスコミの発達、SNSの普及などによって武術での奥義と呼ばれるものが露呈されて、令和の世ではリアルがロマンを駆逐してるのが現状です。ブラジル舶来のVTさえ、MMAと名を変えて競技に進化しており、現在は体重無差別で行われる競技はほぼ絶滅したといってもいいでしょう。

そして区分された階級内でも競技人口が多くて層が厚い中量級や圧倒的な迫力・破壊力を有する重量級と比べると、軽量級が軽んじられるのは仕方無いことなのかもしれません。

その軽量級でも最軽量というべきミニマム級には常に廃止論がついて回ってるのが現状です。

単独での世界戦開催もままならず、ましてやミニマムでは・・・と言われますが、それでも中量級の国内王者以上に存在感を知らしめた世界王者がいました。

 

1.大橋秀行(ヨネクラ)

このチェ・ヒヨンとの試合は両国国技館で行われたもの。

しかもセミは川島郭志vs杉辰也の日本タイトルマッチですから実質、単独で1万人規模の会場を埋めたわけです。しかも試合自体がとても最軽量級と思えない迫力のある打ち合いで昨今の同階級の世界戦とは迫力もスケールも違います。

チャナに負けた試合もセミが佐藤仁徳vs大東旭の日本ウェルター級王座決定戦でしたし、これで東京体育館で興行できるのが凄い。

 

2.井岡弘樹(グリーンツダ)

正直、大橋みたいな迫力やわかりやすさは無かったですが、それでも大阪府立や近畿大学体育館などを数度にわたって満杯にした集客力はさすがでした。

ジャバーとしての資質が開花するのはJRフライに上げてからなのでややパワーレスな印象はありましたが、長身の選手にしては接近戦も上手く、年齢に似合わぬ老獪な試合運びもしました。

ただ、ナパとは相性が悪かったですね。

 

近年、この階級は複数階級の足掛かり程度にしか捉えられておらず、じっくりと腰を据えて防衛を重ねてくれる王者がほとんどいないのが寂しい限りです。単発でも興行が打てて世界戦としての意義を整えてくれたのは新井田とイーグルの並立までかなあ。

高山みたいにとにかく遮二無二コレクションするというのも賛同できません。特に大平や加納と決定戦して獲ったタイトルなんて国内王座みたいなものですよ。

最軽量の王者が最大の会場を満員の観客で埋める・・・

そういう令和のリアル小よく大を制すが出来る王者の誕生を願ってます。

 

題名は浜田さんが解説のときに良く言うフレーズですが、まさに浜田さんだからこそ言うことが出来る金言だと思います。

効率性が重視され、根性論・精神論はパワハラと置き換えられてしまい昭和の遺物と化してしまいましたが、諦めないということで最後の最後のせめぎ合いで勝敗を分けるのはまさにこの部分ではないかということを先日の力石が証明してくれました。

海外というシチュエーションでポイントをリードされて倒す以外に勝ち筋が無い展開でそこから逆転KOというのは一番劇的ですが、それだけに滅多に観れるものではありません。

それだけにそういう試合を魅せてくれた選手は記録以上にファンの記憶に残ることも多いです。

 

1.力石政法(緑)vsマイケル・マグネッシ(イタリア)

まさにここ何年かで一番の逆転劇。日本側のプロモーターがアレだし、リングサイズの問題もあって試合前からいろいろありました。マグネッシにポイント・リードされた展開で11Rの逆襲、倒さねばそれでも勝てないという中でストップを呼び込んでの勝利はお見事。この階級の王者はどこを見ても怪物、難物揃いで一筋縄ではいかないが、力石には頑張って欲しいな。

願わくば3150以外のリングで。

 

2.中谷正義(帝拳)vsフェリックス・ヴェルデホ(プエルトリコ)

ロペスに敗れて、一度は引退を表明した中谷が帝拳に移籍しての第一戦。コロナ禍がまだまだあったので海外で試合をすることになったのだが、いきなり1Rと4Rにダウンを奪われてしまい、大ピンチに。観てる側は単純に「やべぇよ、やべぇよ。」とラウンドを重ねる毎に焦っていましたが(笑)

9Rにタイミングの良い左ジャブでダウン奪い逆転KO勝ちしたときは歓喜しました。まさに最後の最後まであきらめず、最後を救ったのは左。左を制するものは・・・の格言が染みた試合。

 

3.三浦隆司(帝拳)vsミゲール・ローマン(メキシコ)

 

三浦のボンバーが最大級に炸裂した試合。

WBCのSフェザー級王者だったミゲール・ベルチェルトへの挑戦者決定戦というシチュエーションでした。バルガスに前年王座を奪われた三浦がそのバルガスに勝ったベルチェルトへの挑戦を目指すための1戦というわけですが、これが大苦戦。

ポイント・リードされて迎えた最終回、本田会長の思いっきりやってこいという発言に喚起されたか、抉る様なボディでダウン奪っての逆転KO勝ち。

パンチがある選手はやはりこういう逆境に有利だが、それでも勝ち筋を引っ張ってくるには「持って」なければダメだということを感じさせた1戦。

 

4.サムエル・セラノ(プエルトリコ)vs上原康恒(協栄)

 

これは1980年の試合ですが、この時代のSフェザー(Jrライト)は今以上に世界の壁が高く険しかったのですよ。日本人キラーとして名を馳せたセラノは余裕の展開で5Rまでほぼフルマーク。

この日の興行のメインはこの試合の前に行われたクエバスvsハーンズなので所謂、客出しで混雑を避けるための試合順。

そのためか客席は空席が目立ち、実況も緩み気味。明らかに挑戦者を揶揄する様な実況・解説でしたが、6R、先代の金平会長の「好きな様にやってこい」という言葉に贈られた上原の右がセラノの顎を捉えての鮮やかなワンパン逆転KO。

実況席のOH!MY GOD!みたいな雰囲気になったことは痛快ですらありましたね。

苦しい状況下でも決して試合をあきらめずに呼び込む、逆転のKO劇はボクシングの、格闘技の醍醐味です。

そして時代を超えてもその様な試合は何代も語り継がれていくことになるでしょう。

 

 

配信バブルに湧くボクシング業界界隈でひっそりと苦しい立場になってるのがWOWOWエキサイトマッチ。

特に近年の放映カードはPBC系か、またはシルバーのタイトル戦や英国での中堅6回戦まで。昔と比較すると明らかに放映カードの質が落ちてるのは否めない。

SHOWTIMEが健在だった頃と比べてDAZNだのamazonだの競合も多くなり、権利関係や放映権料の問題もあるのだろうが最近はあまりにもな作りが目立つ。サム・グッドマンは将来、井上尚弥との対戦が期待されるかもだが地域王座戦は放映のメインに据える様なものではないだろう。サウジのヘビー級興行は3大会とも録画で後日放映すら切り込めない状況。

そんなWOWOWが4月に思い切った放映メニューを提示してきました。なんと、amazonで放映された今年の1・23大阪と2・24両国を余すところなく3週ぶっ続けで放映。

従来の海外試合を放映するだけでは莫大な海外資本を持つ配信2社には対抗出来ないだろう。そうなると配信の弱点を突くしかない。つまり録画可能であること。

DAZNにしろamazonにしろ、まして国内で放映してるLeminoやU-NEXTにしろ放映した試合のアーカイブをいつまでも残していない。数か月、あるいは数日後にもう一度見直したいなと思ってももう無くなってる場合もある。

次の興行に参戦が決まった〇〇の前の試合を見て予習しておくとか、この間の試合はこういう攻防があったから、もう一度見直してみるか・・・という我々老害のニーズに応えるのは録画文化を継承してるWOWOWだけなのだ。

バブルはいつか弾ける。配信バブルが弾けたときにエキサイトマッチまで消えてたら目も当てられない。ですんで、WOWOWさん頑張ってください!!!